Our Vision

そもそも、なんでこんな時代に新しいコーヒーショップを作らなければならないのでしょうか?日本には、スターバックスや、タリーズ、ドトールコーヒー、それに加えて無数の喫茶店など、数えきれないほどのコーヒーショップが存在しています。カフェで仕事の話をする人、受験勉強をする人、ママ友と他愛もない雑談に興じる人、それこそ色んな人がいて、一見、これ以上無いくらい、たくさんの風景があるように見えますが、でも、何かが足りない。アメリカの西海岸、カリフォルニアのコーヒー文化に触れるうち、私たちは、そう思うようになりました。

カリフォルニアは自由です。とりわけカリフォルニア北部、サンフランシスコ・ベイエリアと呼ばれる地域は、毎日晴天に恵まれ、また乾燥した空気のおかげで、過ごしやすい気候に包まれています。サンフランシスコ・ベイエリアの中心、シリコンバレーと呼ばれる地域では、歴史的に、半導体(インテル社)、パーソナルコンピューター(アップル社)、遺伝子工学(ジェネンテック社)、インターネット(グーグル、ヤフー、ネットスケープ社)、ソーシャルネットワーク(フェイスブック社)、電気自動車(テスラ社)、シェアリングエコノミー(ウーバー、エアビーアンドビー社)など、次々と新しい産業が生み出されました。

シリコンバレーでは、たった数人の、個人の集まりであっても、アイデアとスピード、そして勇気があれば、経済的な成功を掴むことができると心から信じられるエリアです。「ここにいれば、誰もがチャンスを掴むことができる」。街を歩き、明るく行き交う人たちの姿を見るだけで、そんな気持ちになるものです。20代、30代の若者だけではなく、40代はもちろんのこと、50代、60代の人たちですら、新しいテクノロジーが世界を変える瞬間を自分の目で確かめようと、カフェに集まり、新しい会社を立ち上げる話、新しい会社に投資を受ける話をしたり、新しい会社に参加するためのインタビューを受けるのです。

自ずから、カフェという場所が、日本とはまた違う雰囲気に包まれます。そこはチャンスを獲得する場所なのであり、さながら未来への切符を手に入れる駅舎のようです。

ここで、私たちが、カフェの話をしているようで、でもやっぱりカフェの話をしていないことに気づかれたことと思います。なぜなら、それは単にコーヒーショップ、つまりコーヒーが飲めれば良いという話をしているわけではないからです。サンフランシスコ・ベイエリアのコーヒーショップにあるもの、日本のカフェには無い(少ない)もの。それは希望であり、目の前に広がるチャンスの機運かも知れません。

しかしそれは、一方で、形のない空気のようなものです。コーヒーショップのスタッフ、お店の内装や、窓の外に広がる天気、はたまたお客さんの一人ひとりの顔つきも含めて、ある種の楽観性や前向きさを、コーヒーショップ自体が上手く汲み取っているようなのです。

カリフォルニアでは情熱や前向きさ、人とは違うということが評価されます。アメリカは移民の国です。「アメリカ人」と一口で言っても、アメリカに住んでいる人たちの人種は様々。しかし、アメリカでは、若くても、女性であっても、マイノリティーであっても、アイデアと勇気があれば、きっと成功することができるという、確かな空気に満ちています。

メンローパークという街の名前を一躍有名にしたのは、アップルの創業者、スティーブ・ジョブズでした。2005年、スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチは、彼が両親から里子に出され、育ての親からなけなしのお金で学費を出してもらったにも関わらず、リード大学という学校を中退するところから話が始まります。その後彼が、インドを旅し、サンフランシスコ・ベイエリアに戻って、アップル・コンピューターを創業し、パーソナルコンピューター(マッキントッシュ)や、iPod、iPhoneを世に生み出して歴史に名を残したことは有名ですが、そんな彼が学生時代に夢中になったのが、「The Whole Earth Catalog」(全地球カタログ)という雑誌だったのだそうです。

「(このカタログは)グーグルが世に出る35年前の、紙でできたグーグルのようだった」とジョブズは言いました。このスピーチは「Stay hungry, stay foolish.」という言葉で締めくくられます。この言葉が、ジョブズが愛したカタログの最終号を飾ったのです。「 The Whole Earth Catalog」は、サンフランシスコ・ベイエリアの中心、メンローパークという街で、スチュアート・ブランドによって発刊されました。スティーブ・ジョブズのスピーチは全世界で共有され、このメンローパークという街の名前が、にわかに注目されることになります。

のどかな田舎町、メンローパーク。しかしそこには、楽観性を兼ね備え、一方で、大なるものへ果敢に挑戦しようとするシリコンバレーの文化そのものが投影されています。

日本に住む人たちが、大きな木に寄りかかるのではなく、自分たちの力で、小さな木、幹や枝を育て、楽観性と前向きさ、アイデアとスピード、そして勇気を持って何かに挑戦したならば、きっと彼女(彼ら)たちは、キラキラと輝いて、それぞれの成功を掴むことができるはずです。

このコーヒーショップは、そんな人たちを後押ししたい、そんなドラマが作られる場所であって欲しいと考えて作られ、「メンローパーク・コーヒー」と名付けられました。このお店で出されるコーヒーは、コーヒーなのではなく、お客様それぞれの希望が投影された、未来への切符なのだと、私たちは思うのです。